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No.201 2009/02/26

BMWは本気だ

■2007年のエンデューロ世界選手権に初めて登場したBMWのプロトタイプ450マシン。6日間エンデューロでの優勝経験もあるベルギーのモトクロス世界チャンピオン、ジョエル・スメッツのライディングによる鮮烈なデビュー。実戦テストの意味合いが強いスポット参戦だったが、翌2008年は、ファクトリーチームとしてフル参戦。スウェーデンの英雄にして長年ハスクバーナファクトリーチームのエースとして活躍してきたアンダース・エリクソンを筆頭に、シモ・キルシ、アンドレアス・レッテンビッヘラーら気鋭のライダーを起用。キルシはBMWにとってもこの450マシンにとっても初のワールドエンデューロにおけるポディウムフィニッシュを実現。秋の市販モデル発売開始に向けて弾みをつける格好となった。

■市販モデルの名前は「BMW G450X」。BMWとしては初めてのコンペティションユースの市販エンデューロマシン。すでに解説の必要はないと思うが、一見してこれといった特徴がないようにも見えるコンベンショナルな構成ながら、大きく前傾させカウンターシャフトを廃してコンパクト化されたパワーユニット、スイングアームのピボットとドライブシャフトを同軸化したうえで、スイングアームを長く設計したコアキシャルピボットの採用など、BMWらしい先進性が随所に見られるマシン。現代のマシンらしく、軽快なハンドリング、ピックアップの良いエンジンがもたらす自在な操縦性とともに、しかしながらどこか、1980年代のKTMにも通じるような、ゆったりとして、懐の深いものを感じさせる乗り味。それは、450ccという大きめの排気量がもたらすものかもしれないし、ロングスイングアームの効果かもしれない。あるいは、往年のゲレンデシュポルトを想起させる白を基調としたデザインによるものかもしれない。事実、このカラーリングは、初代のBMW R80G/Sに由来するものだとも聞いた。

■昨年末に始まる世界同時不況は、欧州のモータースポーツシーンにも大激震をもたらす。市販モデルもデビューさせ、勢いづくところであったBMWエンデューロファクトリーチームの動向も、ファンにとっては大いに気になるところだった。世界選手権のオフシーズンである冬の間に続けて開催されるインドアエンデューロワールドカップ。その開幕戦バルセロナに登場したBMWファクトリーチームは、しかし第2戦からは欠場。やはり…とファンを心配させた。折角始まったワールドへの挑戦が、ここでつまづくことになるのだろうか。

2009年のBMWファクトリーエンデューロチームは、KTMに真っ向から勝負を挑む、勝負ができるラインナップ。世界選手権はもちろん、アメリカのGNCCでもタイトルを獲得、ハード系と呼ばれるメジャーイベントも総なめしてきたマン島出身のデビッド・ナイト、7度の世界タイトル、GNCCタイトルを持つ天才ユハ・サルミネン、そしてサルミネンと同じフライングフィン、マルコ・タルカラと、いずれも昨年までKTMの屋代骨を支えてきたエース級を3名揃って獲得。これは本当に楽しみだ。今年の世界選手権は、BMWの本格的な参入で史上もっとも注目されるシーズンになる。そこに冷水をぶっかけるような不況の波。

■だが、インドアを欠場したBMWは、その間に昼寝をしてわけではなかった。近づくワールドエンデューロの開幕に向けて、オーリンスに換えてホワイトパワーサスペンションなどで武装するファクトリーマシンの完成度を高める作業に注力。最大排気量のE3クラスを走るデビッド・ナイトのために、480cc程度にボアアウトしたエンジンのセッティングにも時間をかけた。1本につきわずか数分のスペシャルテストで120%のタイムアタックが繰り返されるエンデューロフォーマットの競技にフォーカスし、英国選手権など、ワールドと同じ競技形態のイベントでマシンの最終調整、ライダーのコンディショニングに集中している。 

BMWは本気だ。最強といわれながら、昨年は今や主流とはいえない2ストロークマシンでのE3タイトルと、ジュニアのタイトルしか取れなかったKTMも、BMWに拮抗し巻き返しを図れる強力な布陣で2009のチームをラインナップしている。開幕のポルトガルGPは3月21日、22日。熱いシーズンが始まる。



●FIMエンデューロ世界選手権

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