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No.60
2003/03/04

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北の島からの船旅

■新聞、小説、果ては電話帳まで。ぼくのひどい活字中毒のことについては、随分以前ににも書いたことがあると思うのですが、その中毒はやや症状を弱めつつも、本質的にはなにも変わらずといったところでしょうか。とにかく雑食性で、次から次へと読み飛ばしていく。かと思えば繰り返し読むのも大好きで、同じ本を何度読んでも飽きることナシ。文字ならなんでもよし、というのであれば、Webでもいいのかな、と思ったら、Webはそんなふうには見たりしません。やはり、本の体裁をとっていないと、読む気にはなれないようです。やっぱり、モニターって見ていると疲れるんですね。いつでもどこでも、歩きながらでも、寝そべっていても読める、やっぱり「本」がいいようです。

■先日、フェリーの船中での時間をつぶそうと、いつものように手当たり次第、そこらにあった本を「ガシッ」と左手にわしづかみにしてバッグにほうり込みました。時間のあるときなら、港に行く途中、古本屋にでも寄っていくのですが、この時は、出港の時間も押し迫っていて、それどころではなかったわけです。なんとか時間に間に合わせて、船室の小さなベッドにひっくりかえる。さて、と持ってきた本を広げてみると、それはカバーが朽ち果てんばかりにぼろぼろになった、井上靖の文庫本でした。10年以上も前に一度読んだことのある「天平の甍」そしてもうひとつは、ついこのあいだ、ラリーレイドモンゴルに行く前に読んでおいた「蒼き狼」でした。どちらも、装飾の少ない文章で構築されたものですが、それでいて、ふと見上げた青空の、空の青さまでが眼前に広がるような、不思議な力を持った小説だと思いました(感想文・・・)。

■フェリーの船内では、ひまつぶしに映画も上映してくれるのですが、それがまたまた井上靖の「おろしや国酔夢譚」。なんとぼくは、フェリーによる20時間程度の旅の間に、チンギスハーンの西征と生涯、遣唐使船に乗った学僧と鑑真の苦難に満ちたしかし不撓不屈の旅と生涯、さらに、極東ロシアに漂着し、女帝エカテリーナに拝謁し、帰国の許しをこうためペテルブルグまでシベリアを横断し、そしてついに日本に帰り着く漂流民光太夫という、これまた苦難に満ちたしかし不撓不屈の旅と生涯、三つのスケールのでっかい「旅と生涯」をバーチャル体験してしまったのです。ふう。

■遠征、布教の道、遭難、漂流、旅にもいろいろあるなぁ、と思いましたが、理由、目的はそれぞれであっても、いつも「道の途中にあること」には違いがない。それはまた人生も同じなんだと、船酔いにあっぷあっぷしながら、思った次第であります。北の島の住人は、春になると旅への思いが、強くなります。

■写真は札幌市街から、増毛山地を望んで…

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