ライノの菅原さん
■すでにラリー界のレジェンドと呼ぶべき存在である菅原義正さん。今回のファラオラリーには、モンゴルでも走らせているヤマハの小型バギー「ライノ」でエントリー。このマシンは、氏の息子さんがデザインしているものということで、そのことを語る時の菅原さんの眼は、ラリードライバーから突然、父親のそれになる。息子の作った車で親父が走るなんて最高でしょう? ビバークで地元のTV局の取材を受けていました。キャスターの美女を相手に「え? 取材? ぼくを撮るの? じゃあモデル代100ポンド」と軽口を言って場を和ませています。
■心残りのあるラリーでもありました。せっかくエントリーしたのですが、競技部門の車検に合格せず、体験部門ともいうべきレイドクラスへの変更を余儀なくされたのです。主催者とはもちろん事前にやりとりをしていて、このマシンで走れるということを確認していたのですが、現場では、FIA(国際4輪協会)のレギュレーションに合致していない部分がるあること、ではモト(つまりクアッド)としてはどうかということだったのですが、FIM(2輪協会)ではバーハンドルのものしかモーターサイクルとして認められないということ。ライノは円形のハンドル(ステアリング)を持っていました。
■カミオンドライバーとして常にトップ争いをする菅原さんにとっては「おいおいバカにすんなよ」というところだったかもしれませんが、ご本人はさっさと気持ちの整理をつけて、レイドクラスでのラリーを楽しむことにしたようです。さすがはレジェンド。こだわりのないところを見せます。結局、ほとんどのスペシャルステージを走りきって、競技部門の選手に遜色ないタイムを記録していきます。息子の作ったマシンで砂漠を走る。なにより菅原さんにとっては、それが楽しみだったのかもしれません。
■ある朝の砂丘群で、一足先にスタートしていた菅原さんのライノに追いつきました。小さなエンジンを全開にして砂丘を登っています。それを追い越して頂上で振り返ると、朝日を浴びて、菅原さん満面の笑み。レジェンドとファンライドする、この贅沢。最高の瞬間でした。
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