■ラリーレイドモンゴル編なのに、いきなりISDEのハナシで申し訳ないんですが、ISDEっていうのはまあエンデューロのスタンダードといってもいい競技で、いわゆるオンタイム方式で行なわれます。オンタイム方式というのは簡単に言うと、走行すべき所要時間というのが分単位で決まっていて、スケジュール通りに走ってペナルティ無し、早すぎたり(チェックポイントの手前で時間調整するので早すぎるということは通常ありえないのですが)遅すぎたりするとそのぶんだけペナルティが加えられます。ペナルティを受けても走り続けることはできますが、60分以上遅れると失格になってしまいます。スケジュール通りに走っている(走ることのできる実力あるライダー)にとっては、淡々と過ぎていく時間なのですが、5分、10分、あるいは15分と、タイムチェックポイントごとにペナルティを受け、積み重ねながらかろうじて走り続けるライダーにとっては、本当に厳しい競技です。常に時間に追われながら、しかも行く手の困難な状況に立ち向かうライダーの心境とはどんなものでしょう。
■ISDEにおける60分というリミットは、例えばラリーレイドモンゴルのような競技においては、デイライトが終わりを告げる日没の時間に置き換えることができるかもしれません。夜と昼の違いは、都会のそれとはまったく違う次元のもので、一般的に考えれば行動すべき時間帯ではありません。走行中に考えられるあらゆる危険が日中の数倍になって襲い掛かってくるからです。しかも、やむおえずナイトランに突入するライダーというのは、すでになんとかのトラブルに見舞われているか、あるいはすでに朝から連続している長い長いライディングの末、精もコンも尽き果てているという状況にあるはずです。頼りのガソリンすらわずかであるかもしれない…。
■かろうじてビバークに帰り着く、そんなライダーたちの1日はそれで終わりではなく、そこからマシンの整備、翌日の準備をすっかりすませると明け方近くにもなってしまう。うとうととしたかと思うと、爆音にたたき起こされ、熱いコーヒーでカラダにカツをいれて、また長い1日が始る。そんな日が幾日も続き、ついに念願のゴールにたどりつく。ラリーに「ランタンルージュ」というプライズがあったりします。終電車の赤い灯火に、選手たちの姿を重ねたものですが、なぜそんな賞があるのかということが少しだけわかったような気がしました。それは単に「大変だったね。」というなぐさめのものなんかではなく、誰もが心に持っているはずの敢闘精神を、このプライズを通じて思い出そうという、そいうことのような気がします。 |