■ヤマダさんが、何かで「ハードであるがゆえの膨大な記憶こそラリーレイドの醍醐味」というようなことを書いてらっしゃいましたが、ツールドブルーアイランドの記憶にしろ、ラリーレイドモンゴルの記憶にしろ、日常生活ではありえない緊張の連続に、脳やさまざまな感覚器官は研ぎ澄まされ、いつものぼんやりとした状態での記憶とは違い、瞬間瞬間のことが情報として逐一整理され、畳み込まれて脳の奥底から順序良く積み重ねられているような、そんな不思議な感覚があります。まあ、記憶は記憶に過ぎにないので、だからといって別にアタマが良くなったというわけではないのですが、やはりとても貴重な財産という感じもします。
■昨年のラリーレイドモンゴルを共に走り、そして順位を競いあった仲間でもある岩崎貴司さんが、所用あって札幌に来ているということ。早速、夕食の約束をとりつけて、繁華街ススキノへと出かけました。もうひとり、札幌に住むぼくのライディング仲間も一緒だったので、気をつけて、話題をモンゴルの方にふらないようにしたのですが、酔いが回るにつけ、どうしてもそのラリーレイドモンゴルの話題になりかけ、そしてやっぱり引き戻し、そしてまた何かの拍子に「モンゴルで…」という話しになってしまう。まったくしょうがないですね。
■そんなたくさんの記憶のなかで、なにがいちばん鮮烈に焼き付けられているのかという質問があったとすれば、ぼくはまず答えにつまってしまうでしょう。毎日が強烈な体験の連続で、どれということを言うことができません。ただひとつだけいえることがあるとすれば、それはすべてスピードの中にあったということでしょう。スタートからフィニッシュまで、チェックポイントでのわずかな休憩のほかは、すべてがスピードの中にありました。9000回転を維持し続けるエンジンの鼓動と時速130キロの風の音。それが時々、動物の群れや、川の流れに行く手をはばまれた時、現実的な生活の速度域に下りてきます。風圧からの解放。そしてまた徐々にスピードの世界へと戻っていく時の高揚感。
■今、机の上に、昨年のモンゴルでクラッシュして壊してしまったGPSが転がっています。これをそろそろ修理に出さなくちゃな。と思っているところ。3月も半ば。北の島の札幌も最高気温が15℃にまで上がりそうです。
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