流星群
■ゾーモッドの休息日が終って翌日は未明のスタートでした。夜に砂漠を走るのは初めてだということに気がついたのは、眠りにつく前。なにをしたらいいのだろうとしばし思案する自分。日中の眩しさを防ぐためにゴーグルのレンズをスモークタイプに換えていたことを思い出しました。ウエストバッグを探すと透明のレンズがある。夜になった時のこともちゃんと考えていたんだなぁ。レンズを交換すると、あとはできることもないようなので、少し水を飲んで寝袋に潜り込みました。
■まだ真っ暗闇の砂漠は身震いするような寒さ。一台、一台と闇の中にバイクが消えていきます。テールライトが見えるのはほんのわずかな時間。走り出してみると、ライトが照らしてくれるのは、本当にわずかな空間だということがわかりました。ライトのセットアップも良くなかったのですが、せいぜい80km/hほどでしか走れません。4輪や、夜の走行が得意なライダーに追い越されますが、自分はというと、このスピードでも充分に危なっかしくてついていくこともできません。地平線も見えない真っ暗闇。夜明けはまだかまだかと、そればかりを考えてしまいます。
■前方を凝視する眼のすみっこに、時々、なにか光りが横切っていきます。頭上を、光りが追い越すように走っていく。また誰か追いついてきたのかな? あるいはゴーグルの乱反射なのか。いくつもいくつも光りが追い越していく。しばらくして、その正体がわかりました。真っ暗な天空を走るのは、たくさんの流星だったのです。ペルセウス座流星群の時期に重なっていたということを知ったのは、ラリーが終ってからですが、ゾーモットの砂漠で見た流星たちが、その流星群のものだったかどうかまではわかりません。
■待ち遠しかった夜明の薄明かりとともに、流星が踊る時間も終りました。ちょうどルートは平原を抜けて、恐竜の谷と呼ばれる峡谷に。時計を見ると、スタートしてから1時間ほどしかたっていません。3時間ほどは暗闇に耐えていたような気がしていたのですが…。南ゴビのラリー最深部。きっと今日も暑くなるんだろうなぁ。
写真 : 治武靖明
ビッグタンクマガジン
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