モトクロスとエンデューロ
■写真はヨーロッパのトップエンデューロライダー、ユハ・サルミネン。エンデューロ世界選手権では1999年から毎年チャンピオンを獲得して6タイトル保持。ISDEでも数々の優勝を飾り、今年はそれに飽き足らず、アメリカでもっともメジャーなオフロードレースのシリーズGNCCにチャレンジ。現在スタンディングトップ。このまま行けばチャンピオンは、カタい。
■天才ユハ・サルミネンのライディングは、一言でいえばスムーズ。その部分だけを切り取ってみると、決して激しくはなく、派手でもないために一見早そうに見えない。無理をしていない。バイクがもっとも速く走れるような自然な動きをしている証拠なのでしょう。
■天才ユハ・サルミネンが出会ったもっとも強いライバルは、2003年にISDEブラジル大会に出場してきた、ベルギーの、これも天才と呼ばれるモトクロスライダー、ステファン・エバーツだったかもしれません。エバーツについて、ここであれこれ書くことはないし、また語れるものも持っていない自分です。
■ステファン・エバーツは初めての競技フォーマットに苦戦し、タイムコントロールではあわや遅着というシーンもありましたが、スペシャルテストではトップタイムを連発。サルミネン、そしてステファン・メリマンを抑えてベストパフォーマンスで優勝を飾りました。
■あれほど、スムーズに見える。事実、他のエンデューロライダーに比較すると抜群にスムーズなサルミネンのライディングが、エバーツのそれに比べると、やはり荒っぽく見えました。エバーツのライディングは、バイクのスピードが落ちないライン取りを優先しているようで、それに比べると他のライダーは、走りやすい場所を選んで走っているだけに見えてしまいます。
■エバーツとはいったいどんな化け物なのか。
■ちなみにサルミネンも、エンデューロの無い時には、トレーニングのためにモトクロス世界選手権を走ることがありました。10位前後。やはり速い。モトクロスのライダーがエンデューロにも出場して好成績を挙げる例は少なくありません。ジョエル・スメッツも、ISDEでは何度も優勝しているライダーです。
■全体にいえば、ワールドクラスのエンデューロライダーのライディングスキルは、モトクロスライダーのそれに少し劣っているというのが、一般的な状況ではないでしょうか。その理由は、単なるコンペティションの土壌の違い。プロスポーツですから、どの程度のお金がそこに集まっているか、ということに言い換えてもいいかもしれません。そして片や、それを国技のように位置づけるベルギーのような国があるほどのスポーツです。
■エンデューロは、それほどではありません。だからトップ選手のレベルというのはそう高くはない。しかしそんなことがエンデューロというスポーツの価値ではない。アマチュアもプロもなく、いやプロもその肩書きを外して、ともに自分を試す場としてそこに足を運ぶ。そんな機会として存在するのがエンデューロなのではないでしょうか。
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