キャメルバックとトライアル
■こんなキャッチフレーズで一世を風靡したアイテム「キャメルバック」。ネーミングもいいですよね。ラクダのコブ。乾いた砂漠を渡るラクダのように、水分を背負うことで、乾きを乗り切ろう、と。日本のダートライダーなら(モトクロスは別か…)大抵ひとつぐらいは持っているハイドレーションバッグ。中身はスポドリ、お茶、ミネラルウォーター、といろいろですが、特に夏の耐久レースを走りきるには必要不可欠といってもいい装備になっています。ラリーでも、なかなか便利ですよね。2リットル入りの水筒を持つのは難しくても、キャメルバックなららくらくだし、ちまちまと水分補給することで体調も万全です。
■3時間、4時間というエンデューロ(クロスカントリー)レースでは不可欠なアイテムとなっていますが、エンデューロの本家本元であるシックスデイズエンデューロはじめ、世界選手権などオンタイム制の競技では、ハイドレーションバッグを使う人はほとんどいません。それはなぜかというと、競技フォーマットの違い。3時間、4時間ノンストップのクロスカントリーでは、水分補給のためにいちいちストップすることなど当然できません。でも、シックスデイズなどのエンデューロでは、20kmおきに、長くても50km以内に次のタイムチェックにたどりつきます。そこでは、余った時間を利用して燃料補給もできるし、整備も、水分補給も、必要ならば軽い食事をすることもできる。わざわざ重たい水筒を背負う必要がないというわけです。
■エンデューロ、という語にはいうまでもなく「耐久」というニュアンスが含まれていますが、その競技形態をつぶさに見ていくと、それほど「エンデュランス」であることにこだわったものではないことがわかります。同じモーターサイクル競技でも、3時間、4時間のクロスカントリーレース(GNCCに代表されるような)ほうが、その中身はタフでストロングな耐久レースと呼ぶにふさわしい。ISDEなどは、1979年までがそうであったように「トライアル(ISDT)」と呼んだほうがずっと「体を表わしている」ような気がします。
■無論、現代のトライアル競技との混同を避けるための名称変更だったわけですが。でも、アメリカのどこかの、小さな2日間エンデューロの名称には、今でもトライアルという名称が残っているはずです。それはやっぱり「レース=競走」ではなくて、「トライアル=試験」なんじゃないかと思うわけです。
それにしても今日は暑いなぁ…。
写真は2003年ISDEブラジル大会より
連日40度を越す猛暑だったブラジル大会では、熱中症のためにイギリスのマット・ボーデンというライダーがなくなりました。主催者を代表するフランコ・アチェルビスは、哀悼の言葉とともに、選手・関係者全員に、しっかりとしたハイドレーションを勧める警告文を出しました。本当に暑かった6日間。
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