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レゴラリータ!! その3

■と、まあ「左キック」に象徴されるように、かつての欧州製エンデューロマシンというのは、日本製のマシンに慣れているぼくたちにとって、ヒトクセもフタクセもある存在だったわけです。もちろん、それは単に「キックが逆にツイテル!!」とか「なんでセンタースタンドがあるんだろう!?」といった外観的な特徴に限られたものではありませんでした。80年代のエンデューロマシンのナニがすごかったかというと、何よりもその操縦性でした。とにかく真っ直ぐ走ろうとするチカラの強さ。直進性、外乱に対する安定性の強さといえば、もう驚くばかりのもの。そして逆には今のマシンに比べると曲がるのが本当に大変なマシンだったと思います。そのあまりにも特徴的な操縦性にびっくりしたぼくは「ははあ。ヨーロッパのエンデューロっていうのはあまりカーブがないんだな」と推理したものです。事実は違ったと思いますが、とにかく直進安定性が重視されていたことは間違いありません。スピードを出せば出すほど安定し、泥でもガレ場でもとにかくどっしりと安定して突き進んでいくストロングなキャラクターは、日本製のどのマシンにもなかったもので、あるいは今のエンデューロマシンからも失われつつある特徴かもしれません。

■とはいっても、その直進安定性というのは現代のテクノロジーが見れば、あって当然というレベルのもので、今のマシンであれば加えて優れた旋回性能をも兼ね備えていると言うべきでしょう。それでもかつてのエンデューロマシンがナニを重視していたかということで言えば、やはり直進安定性だったはず。明らかな高重心、長いスウィングアーム、大柄なフレームは現代のエンデューロマシンとはまったく異なるデザイン。これに、どっしりと重たい回転マスを持ち、粘り強いトラクションを発揮するエンジンを載せて、80年代エンデューロマシンの出来上がりということになります。現在人気のあるブランドのひとつ、GASGASのような軽快そのものの旋回性や鋭いピックアップのエンジンを知ってしまった現在では、とても乗りこなす自信はありませんが、当時はそれが「エンデューロマシン」だったのです。

■重厚長大の80年代エンデューロマシンから、軽快そのものの21世紀エンデューロマシンへの移り変わり。その背景には、当然、エンデューロという競技そのものの変化があるといえるでしょう。ルート走行はすべてオンタイムでこなすのがあたりまえ。成績はすべてモトクロステスト、エンデューロテストといったスペシャルテストでのタイム差で決まる現代のエンデューロ。全6戦の世界選手権エンデューロでは1位と2位の差がシーズンを通じてわずか数秒ということすら珍しくない。そんな戦いを繰り広げるライダーたちが求める性能と、かつてのオンタイムでこなすことが難しく、むしろマシンを壊さない走りをすることのほうがずっと大切だった時代のライダーが求める性能とでは、大きく違うのが当然ですよね。それはエンデューロマシンに求められていた思想としての「信頼性」なのだと思います。もちろん、現代のマシンと85年当時のマシンと、どちらが信頼性が高いかというと、現代のマシンがあらゆる面で数倍も信頼できると思います。が、限られた技術のなかで、どれだけ信頼性が重要視されていたかというと、80年代のマシンに軍配があがるでしょう。左キック、そしてセンタースタンドという装備が象徴していたのも、つまりは「ヒトが乗るマシン」としての信頼関係だったんじゃないかと思っているのです。

■続く…

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