「昼間からサーフィンに行ってしまう社員はきっと日本ではクビになる」
■ぼくのタンスに入っている服を、ブランドごとにより分けたら、二つの大きな山が出来ると思う。ひとつはユニクロで、ひとつはパタゴニアだ。ユニクロは安さの代名詞のように言われているけど、実は、言われるほど安くないという印象がある。普段着としては、決してどうしようもない製品を作ってるという感じもしない。パタゴニアは、アウトドア用クロージングのトップブランドで、高いというイメージがあるのだが、札幌にはパタゴニア・アウトレットという店があって、品揃えは旧版などに限られるが、そこではほとんど定価の半額で買えるのでさほど高い買い物とはいえない。しかも、買った服はすべて3年、5年、中には10年以上着ているものもあり、実際の価値からすると、タダ同然とも言いたくなるほどだ。最近読んだ本の中に「貧乏人には安物を買う余裕などない」という一文があったのを思い出した。とにかく北海道に住んでいて、しかも、外で仕事がすることが多い、となると、こういった出来の良いアウトドア用クロージングは欠かせない。パタゴニアの店は、行けばどれもいい品物だということがわかっているし、あれこれ目移りしなくて済むので、買い物が苦手な人間にはとてもありがたい存在。目移りしなくて済むというのはユニクロに足を運ぶのも同じ理由なんだれど…。
■そのパタゴニアの店に行くと、面白いのはみんながスキーやスノーボードを楽しんでいて、行けばその話になることだ。どこに雪が降ったから今日は誰が休みで、先週はあそこがこうだった、という具合だ。ぼくも深雪(パウダースノー)のスノーボードが好きなので、行けば、そういう話をしてくれるのだが、こちらは仕事のスケジュールがいっぱいでほとんど山に行けていない。照れ笑いをしながら、話を合わせている程度…本当に彼らはよく遊んでいる。うらやましいほどだが、この店がもっと素敵なのは、お母さんがお母さんのまま、ちゃんと働いている姿を見ることができることだ。生後数ヶ月の赤ちゃんをスリング(肩掛けのような袋)に入れてフロアで立ち働いているのは、本当に素敵な光景だ。他ではまだあまり見たことがない。赤ちゃんは不快なことがあったり、こうして欲しいということがあると大きな声で泣くものだ。しかし考えてみれば服屋のフロアで赤ん坊が泣いて困る人はいない。
■これはお店の方針だと思っていたのだが、それだけではないことが、最近読んだ本でわかった。面白い本があるといって友人に薦められたのは、パタゴニアの創始者であるイヴォン・シュイナードという人が書いた「社員をサーフィンに行かせよう」。経営書として扱われていることが多いけれど、読み物としてもオススメの一冊。
●社員をサーフィンに行かせよう
パタゴニア創業者の経営論イヴォン・シュイナード (翻訳 森摂)
東洋経済新報社刊 \1,890 /
ビッグタンクマガジン
http://www.bigtank.cc |