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No.135
2006/02/09

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ごきげんなガストンさん

「なあ、見てくれこのタイヤ!! こんなに減ってしまって、これじゃ明日走れるかどうか心配だよ…」

「ちょっと、このGPSどうだ。使い方がわかんないんだよ。君ちょっと見てくれないか」

「うーん。やっぱりハイスピードライディングは最高だ。"ねぇ!?" 最高だよ "ねぇ!?"」

モンゴルや四国、北海道。一緒のラリーやイベントに参加したことがある人なら、まるでガストンさんがそこに居るみたいに思い出すかもしれません。

まるっきり、ぼくたちと同じところにおりてきて、子供のように無邪気にライディングを楽しんでいた。そしてあっという間に去っていってしまった。ガストンさんは、ぼくたちの心に、大きなものを残していってくれた。

「見てくれ、このバイク。ニューKTMだ。450だ。速いぞ」

マシンやイクイップメントには意外にうるさい人だと思っていた。考えてみれば、当たり前だった。そういう繊細さの無い人が、モータースポーツで成功するはずがないのだった。そのガストンさんが、珍しく満足げにタンクを叩いてそう言ったのだった。

最後に走ったツールド・ニッポン。
ぼくは明け方の小樽港に、一行をのせたフェリーを迎えに行った。
ガストンさんは、ゴキゲンで稚内まで突っ走っていった。
小樽から稚内まで、何百キロもある。
気温は日中でも10度に届かない、小雨の降る午前だった。
きっと、ほとんど全力疾走みたいな勢いで走っていったに違いない。

「まったく元気なオジサンだ」

ぼくは彼が病におかされているなんて知らなかった。
ちょうど一年前、彼の悲報が北の島まで届いた時、何かがわかったような気がした。ガストンさんが、どれだけバイクを愛して、ぼくたちのことをどれだけ仲間として大切に思っていてくれたか、とういうことだ。

本当にありがとう。
ガストンさん。

写真 / 治武靖明

ビッグタンクマガジン
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