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No.028
2000/12/15

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北の島

■先週はマツモトさんと一緒にモンゴルの夕べに行ってきました。伊豆というところは初めてだったのですが、天気がよく富士山がきれいに見えたり、気温が高かったためでしょう、うっすらと霞がかかった駿河湾が一望できたりと、ちょっとした小旅行の気分が楽しかったですね。マツモトさんは、もともと寡黙なヒトなんですが、クルマの中では久しぶりにたくさん話しもできたし、またモンゴルの夕べでは、たくさんの人たちとざっくばらんな会話も楽しめたし、遠くから行ってみた甲斐もありました。ただ夜のビバークは寒かったけど…。

■ラリーレイドモンゴルでのビバークを再現した会場には、今年のモンゴルでぼくがずっとお世話になり、ひそかに「ハルキ専用ゲル」と呼んでいたゲルテント(本当はレントゲン現像室兼公式通知ボード設置用のテント)もあり、ぼくは懐かしさもあって、宿泊用としてはいささか開放的すぎるかもしれない、そのゲルテントにシュラフを延べて眠ることにしました。寝そべってみると、テント内の空間は突然、今年のラリーへとタイムスリップしたかのようで、閉じたまぶたに、ラリーの光景が次々と浮かびます。夜更けまで整備が続いたロシアンジープのクルーたち。エンジン調整をするマシンの爆音、どでかいハンマーでツブれたフェンダーを板金する音、手を滑らせてタイヤレバーがはじけとぶ音、誰が何を溶接しているのか青い火花が明滅している。カミオンに大量のバッグを積み込む男たちの掛け声。そしてビールを片手にひと時の歓談を楽しむパイロットたち。ただ、ウランバートルまで走るという、常識で考えればあまりにも希薄な目的のための旅団と、そこにいる仲間たちへの愛おしさがまた蘇ってきました。

■モンゴルの夕べ会場に特設されたカフェで、ずいぶん遅くまで飲みました。おかげで、翌朝は9時30分までぐっすり。起きたら、もう朝食の準備が整っている頃。「あのヒト。ずいぶん寝るなぁ」と思ったヒト、あのゲルテントで寝ていたのはぼくです。モンゴルでも一番寝ていたのはたぶんぼくでしょう。フォトグラファーA氏にも「あんた気楽な旅行やねぇ…焼酎かっくらって寝るだけやもんなぁ…。」とありがたいお言葉をいただいたほどに。モンゴルの夕べの翌日はマツモトさんの事務所に一泊、さらに次の日は都内某出版社にカンヅメということで、日頃、ぼくたちの業界にとっても経済の中心となっている首都トーキョーにめったに出てこないぼくとしては、何かと済ませておきたい用事も多く、あわただしく小旅行(というか出張?)もあっとうまに終わった次第。

■モンゴルの夕べでは、マツモトさんが作ったコマ図で、ナビゲーションに慣れるためのショートツーリングもあって、ぼくもちょこっと走りました。本当はガストン・ライエさんが乗ったF650GS DAKARに乗ってみたかったんだけど、一足遅く、ボルドバートルさんのが乗ったXR400Rとなりました。「えーん、こんなところまで来ていつも乗ってるヨンヒャクかぁ!?」と子供ようにダダをこねそうになりましたが、乗ってびっくり。出来が良いのです。今年のラリーレイドモンゴルには、北海道から伊藤聖春というライダーも出場して、モトではガントルガさんに次ぐ3位、マラソンクラス優勝となかなか健闘したのですが、家が近い(といって50kmほど離れていますが)こともあって、同じくヨンヒャクをラリーマシンに仕立てるお手伝いをしました。ラリーマシンを作るのは初めてということもあって、どうも要領を得ず、仕上がりも輸出時の神戸でみんなの口をあんぐりさせるほどのもの。スチールの重たいタンクで、おまけにシートが半分ほどの長さになって、着座位置が超ウシロという、まるで初期のパリダカマシンのような状態。でも、本人たちは「なかなか良くできたねぇ。なんかタンクもでっかくて可愛いしねぇ。」と納得していました。ですが、ボルドバートルさんのマシンに乗って、ちょっとびっくり。軽い、乗りやすい、走る!! 「これはイトーさん、ちょっとかわいそうだったかなぁ」と今更ながら思ったりして…。で、考えたことは、雑誌とか聞いた話とかでラリーマシンの作り方、その情報を得ようとしますよね、みんな。でも、良いものと悪いものの違いは、やっぱり肌で感じなきゃダメですね。来年のモンゴルを考えているヒト、ブルーアイランドを考えているヒトも、これからマシンを作るなら、一度は誰かのマシンに触れて、見て、できれば乗ってみたいものです。もし、最初にボルドバートルさんのでも誰のでもいいけど、良いマシンに乗ってみていたら、イトー・キヨハルのマシンも、もう少しはグッドなものになっていたんじゃないか、ってそう思って、いささか反省した夕べでもありました…。

ビッグタンクマガジン
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