クロスカントリーラリーはエンデューロ化していく?
■ファラオ、チュニジア、モロッコなど、歴史もあり知名度もあるクロスカントリーラリーもFIMの世界選手権になっていて、ダカールは特別なアニュアルイベントとして独立してはいますが、競技の基礎的な運営面では、FIMのエンデューロ・クロスカントリーラリー委員会の決定に可能な限り足並みを揃えていくという経過が続いているようです。特に、最近では安全面に関しての重要な変更が続いています。
・最低航続距離を250kmに短縮する(積載燃料を減らし、マシンの重量増を抑制し、操縦性の悪化を防止)。
・ツインシリンダーの禁止(高速化の抑制)
・GPSによる最高速度規制(高速化の抑制)
■ここ数年で、著名なライダーだけでも多くの命を失ってきたクロスカントリーラリーの世界では、当然の流れということができるでしょう。高速化し、スロットルを緩めないことが、他のさまざまなタクティクスに比して重要性を増してきていることが、ライダーの命を危険にさらす大きな要因になっているということは否めない。これをなんとかしようというのが、現在の流れということができるでしょう。
■しかし、こうしたシステマティックな規制が、画一化を生み、ラリーが持つ本来的な意義をスポイルするという見方も一方ではあります。レギュレーションが増えれば増えるほど、ラリーはラリーらしさを失っていく。つまるところ、エンデューロと変らないものになってしまうのではないか、そんな風にも思うわけです。
■ここでいうエンデューロとはなにかというと、ISDEやエンデューロ世界選手権のような競技のことです。1913年に始まったこの競技の黎明期には、もちろんクロスカントリーラリーと呼ぶような競技はなく、エンデューロという競技もない。あるのはモーターサイクルの性能、ライダーのスキルをテストするという目的のための競技会としてのISDE(かつてはISDTでしたが…)。その姿は、時にラリーにも似ていたり、あるいはトライアルそのものだったこともある。スクーターも走っていれば、2気筒のマシンも、1000ccのマシンも走る。タイムの競い合いというよりは、マシンの性能を実証し、ライダーの技術を向上させる研鑽の場だった。
■長い年月をかけて、公平性、安全性、社会環境の適応のために、少しずつ規則を整え、変化させて、現在のように、ほとんど同じ姿をしたバイクで、ほんのわずかなタイム差を競うものになりました。一台のバイクとちょっとしたスペアパーツとウエストバッグの工具があれば、誰でも参加できる。しかも一流のプロ選手も、アマチュアもまったく同じ条件で戦えるように工夫されたパルクフェルメシステムなど、それは素晴らしいアマチュアスポーツの世界、エンデューロ。
■しかしクロスカントリーラリーに求められるのは、そんなことではないような気がします。ラリーは、舞台を砂漠に移しただけのエンデューロ、ではないような気がするんですが…。
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