ヒグマ
■ツールドニッポンNEステージを走る人たち(選手に限らず、オフィシャルスタッフ
も含めてですが)のなかで、運の良い人がいれば、もしかするとヒグマに出会うことがあるかもしれません。ただし、バイクやクルマに乗っている時ではなく、この場合は「運悪く」マシントラブルや、転落、脱輪などで山の中で往生し、さみしく救援を待つとき、トボトボと里があるとおぼしき方向に向けて砂利道を歩いているとき、突然、あのデッカイ顔したクマさんに出会う、ということです。
■クマは、もちろん人間を恐れているので、クマがこちらの存在に気がついている限り、近寄ってくることはないといわれていますが、獣道や、先が見えない曲がり角、両岸が切り立った沢の中、などでは出会い頭に、クマと遭遇することが充分にありえます。また、観光地の生ゴミなどによって人間が持っている食べ物の味をおぼえたクマの、その食欲が、人間を恐れる警戒心を上回って人間に近寄ってくることが、充分にありえるともされています。
■ぼくも、いくつかヒグマ(野生)との接近遭遇を経験しています。もっとも傑作だったのは、ずいぶん以前のことですが函館郊外でラリー(4輪)の撮影をしていた時です。林道のスペシャルステージで、崖の上から数人のカメラマンたちとともに、ラリーカーを待ち構えていたのですが、いっこうにスタートしない様子。オフィシャルの無線を聞いていると「SSをクマが走っている」とのこと。「ははは、クマがゴールするまで休憩だな…」なんて笑いあっていると、まもなく当のそのクマが、眼下の林道を全速力で走っていきました。ラリーカーならぬ、ラリークマの登場に、一同、目を丸くするとともに大笑いという次第。このハナシにはつづきがあります。その後、ラリーは再開されましたが、あるクルーがSS中に転落。20メートル以上も崖を転げ落ちて、まさに九死に一生。無事でよかった。ナビゲーター、ドライバーともになんとか崖を這い上がって、よつんばいの格好で林道に出ると、ヒグマが走って来た!!
ドライバーは「もうだめだ…」と思い、ナビゲーダーは気を失って、また崖をずり落ちていったとか…。
■さて、クマに出会ってしまったらどうするか。もっとも美味である内臓だけを食べられて、残りは後の楽しみにと土に埋められてしまわないためにどうすれば良いか、ということですが、ご存知のとおりこれにはいくつもの定説と伝説があります。もっともポピュラーなのは「死んだふり」。ですが、あなた、あんなののが近寄ってきて、臭い息をふきかけながら顔のまわりをクンクンされて、それでも微動だにせずに息をとめて死んだふりができるでしょうか。木に登る。走って逃げる。はともにバツ。ヒグマは大の木登り名人だし、走る速度は50km/hを超えます。しかも4WDどころではない走破性。人間なら歩くこともできない笹ヤブの中でも、かなりの速度で走ります。
■最近、有効を言われているのはカプサイシンスプレー。クマの鼻っ面に吹きかけてやって、強引に撃退するというアイテム。ですがちょっとかわいそうですね。だからまあ、クマに出会ったら「自分の番が来た」と思って、素直に食べられてあげようじゃありませんか。でも、もうちょっと生きて、バイクに乗ったりして楽しみたい、という人はこうしましょう。決して背を向けて逃走してはいけません(かならず追ってきます)。クマを刺激しないように、眼をそらさず、クマが立ち去るのをまずは待ちます。クマも人間を怖れています。できれば何事もなく、この場を去りたいのです。クマをにらみつけた眼をそらさず、クマを刺激しないように後ずさりして、フェイドアウトするのが一番良いというのが、最近の定説となっているようです。
■しかし、それでもクマがむかってきたらどうする!!?? ぼくが気に入っているクマ
対策はこれ「闘志を奮い立たせてクマと戦え!!」という説です。
■クマが襲い掛かってくる気配を見せたら、棍棒、ナタ、石でもなんでもいいからまず右手に得物を持て。得物を持つことでおまえの闘志は倍増する!!
クマの鋭いツメによるナックルパンチを避けるために、フトコロに飛び込むのだ。同時に、得物を振り上げて、眉間に一撃を加えろ!!
その一撃が大切なのだ。野生動物の王者であるクマは、自然界に敵を持ったことがないゆえに、攻撃によってもたらされる痛みに慣れていない。人間という小さな動物による意外な一撃に驚いたクマは、急激に闘争心を失って、確実に逃げ出す。クマに出会っもあきらめるな!!
絶対に負けないという気持ち、勇気を振り絞って一撃にかけろ!!
■ということなんですが、いかがですか?? 北海道のヒグマ。大きいものでは体重
400kg、後ろ足で立った時の身長3メートル。ムリだって…。さて、本当に大切なことは、ヒグマに人間の存在を知らせて不意に遭遇しないようにすることです。前述のとおり、クマは人間を恐れていますから、人間がいるとわかっていれば、それを避けて行動します。山中でマシントラブルなどを起してしまい、歩くハメになった時は、大声を出したり、ナベを叩いたりしながら歩くように気をつけましょう。まう、そんなにたくさんクマがいるわけでもないのですが、ぼくが住んでいるところ(札幌市街ですよ)の裏山にも、クマは出没しているくらいですから。油断はできません。ヒグマと人間との出会いは、双方にとってやはり不幸なことなのです。
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