「質実にして剛健」
数日間書いていたプレゼン用の企画書がまとまり一息つきました。「スポンサー企画書?」「残念でした。」ラリーの関係ではありません。で企画書の内容を他に話すことはできないのですが、我々がもうすぐ迎える近未来の価値観を今の時代のキーワードを元に解き明かし、その時代のコアたる生活者の動向を推測して行こうというのを書いてました。・・・なんのこっちゃ、でしょ。でもこうした企画書作りは、かなり本業の中心的な部分なのです。
でその企画書にある近未来のライフスタイルについて。まあ今の流行で言うところのロハス、エココンシャスとかがお決まりのワードで出てくるのは不可避ですが、最近ボクが多用するのが「エキスペリエンツ」これは堺屋先生の近著「エキスペリエンツ7」から来ているのですが、そこは「団塊の世代」という言葉を作り出した堺屋先生の慧眼に心酔しているという贔屓目な部分はあります。(最近はお目にかかってお話しする機会も多い堺屋先生)でエキスペリエンツとは、まあ一線で働いていた団塊の世代のことだと思ってください。彼らが定年退職を迎える時代がやってきているのですが、高度成長期と数度のオイルショックやバブルとその崩壊・・・実に多くの経験(エクスペリエンス)と知識をお持ちです。
55歳とか60歳とかはまだまだ若く、これからさまざまな挑戦も可能です。そうした人たちは、もうブランド品に目を輝かせたり、安易な儲け話に飛び乗ったりはしません。いや、するかもですが。
そこで質実で剛健、ブランド品よりも素晴らしい日本の美術品や日本の風景、歳時記に生きる古くからある日本人の暮らしと価値観、質実な暮らし。まあ質実とは質と実とがマッチしているということ。株式時価総額と総資産のバランスが取れていることかもしれません。100円の価値の株が700円もしたどこかとは違うわけです。
菅原さんの映像がサンデースポーツでたっぷりと放送されていました。見られた方も多かったことでしょう。彼は何故リタイアしないのか?1988年にテネレでリタイアし次の年から完璧なんですね。そういえばその時、ボクはその現場を通りかかりました。最後のリタイアの目撃者なんです。360度遮るものがないテネレハイウエイ、ジャドからアリットへ向かう700km超のステージ。一斉スタートでした。トップグループ・フロントロウ?には、アリ・バタネンやユハ・カンクネンらフライング・フィンのプショー「クーかっこよかった」もちミツビシはアンドリュー・コーワンやシノヅカ、ちょっと勢いで負けていた。に混じってダフのデルーイ。2列目にはダフの2号車、スタート直後は、なんとダフが先頭を走っていた。
そのダフの2号車が何もないように見える大砂漠のわずかばかりのバンプに180km/hで突っ込んだ。いやその瞬間は見たわけではないのですが。フルサイズのカミオンの大前転のエネルギーは凄まじかったのでしょう。ナビはシートごと放り出され、車体の破片は周囲に延々と飛び散っていました。
その右手を走り抜けました。しばらく走ると、菅原さんのライトブルーグリーンのパジェロが止まっていました。ボンネットを開けてエンジンルームに頭を突っ込んでいました。
「大丈夫すか?」
「うーん、ぜんぜん大丈夫。それよかミツビシのカミオン見なかった?」
当時はミツビシのプライベート参加者向けのパーツ輸送カミオンが走っていました。デポジットを入れておくと純正パーツが任意の地点で受け取ることが出来ました。
「いや、ボクたちよりは後ろですが・・・」
とにかく見渡す限りの大平原。ピストは数百キロ先では合流するものの、隣のピストを走るラリーカーも砂煙さえ見えないほどです。
大丈夫だから行け!といわれるままにスタートしたのがラリー中に見かけた最後でした。大きな事故があったのでカミオンバレイがすぐにやって来て、強制的に乗らされた、という話はダカールで聞きました。電気系統の時間さえあればリカバリー出来たトラブルでした。リタイアという事実は残りましたが、「それは悔しいですねえ」というボクに「まあ仕方がない」と実にクール。見習いたいものだなあと思いました。それ以来いやそれまでもですが、菅原さんはトラブルの発見とそれ以前にどうやってトラブルを未然に防ぐか?という考えと行動に心血を注いでおられました。まあリスクマネジメントのプロフェッショナル!なのであります。どうすれば17年連続完走ができるのでしょうか?という質問をする方は多いでしょう。NISSANも早くからこうしたマネジメントの力とコラボレーションするべきだったのに、と思います。
エキスペリエンツ・・・経験者たち。これからは口先で勝負する人たちは淘汰されて行き、実行力と経験値の高い者たちが正しい評価を受けるはずです。
きょうの一枚
ゲルの中です。天蓋は外部から開閉でき換気や温度調整ばかりか天体観測にも?大いに役立ちます。柳の枝で作られた無数の梁は、まるで宇宙暦のようで・・・・幾百年もハーンたちが戦略を練り何に突き動かされてか世界征服の野望を紡いだのもこのゲルの中です。 |