BEIJING-ULANBAATARより主催者雑感その3
メディカルについて・・・
SSERにはレントゲンがある。ラリー主催者がレントゲンを持っているというのも「?????」な話だが。撮影と現像はいつも2人のカメラマンが担当する。気温を調べて現像液を作り、撮影から一連の作業をこなす。大変なご苦労だ。1日中撮影をしたあとの作業だ。
なぜレントゲンの導入をしたか?というとこうだ。1995年第1回大会、ラリー中に起きた打撲症!ドクターは「痛みがひどいから骨折しているかもしれないし、場合によっては折れた肋骨が肺に刺さっているかもしれないから、緊急輸送してくれ」触診だけでは最悪の場合が分からない。「はい」と航空機をチャーターして中国北京の病院に、1週間のうちに4人搬送した。いずれも単純骨折や打撲程度で大事には至らなかった。「レントゲンさえあればなあ」ラリーの医療チームの切なる思いだった。
ラリーの医師はボクの大切な友人ボルドサイハンという男。彼がリーダーを勤めている。日本人医師が「この男はすごい!」と言い放った。アメリカの大学病院で脳外科の臨床と救急救命をやっていた。問題なのは、たいがいの負傷者に対して「大丈夫!」「心配ない!」「ウイスキーを飲んでおけ」「点滴?いらない!」とそっけないたらありゃしない。だから彼が「やばいぞ!」というとボクは非常に緊張する。緊急輸送の準備を始める。燃料の問題やフライト時間ラリーのオペレーションに与える影響を、短時間のうちに検討し答えを出さなければならない。実は今大会は「やばいぞ」と彼が言ったのはたった1回きり。それは炎天下を歩くボクに言ったもので、だれひとり負傷者には「やばい」は無かった。
ボクが「全員のメディカルチェックをしよう」と言ったエタップ3の朝も、彼は「???」「いや結構熱中症気味で、体温高いままの参加者が居る」と言うと「水を飲むように言え」というばかり。「そのためにもチェックをして意識を高めるんだ」と言うと「それなら分かった」と作業を始めた。
彼はモンゴルの大自然が大好きだ。ヘリの窓から食い入るように風景を眺め、降りると石や化石を探す。純血のモンゴル犬の子犬を探すのもライフワークになってきている。
「今回も素晴らしいルートに連れて来てもらって感謝している」最後にヘリを降りて別れ際に握手しながらそう言った。最後にこういった「今回は大きな事故や怪我が無くてよかった。8回大会はいろいろあったのにな。」もちろん彼が言うように全く無かった!分けではなかったのだが・・・彼の言葉には生命的なリスクがある・・・と言う部分が抜けていた。一人の優秀な医師がラリーに居ることの安心感は計り知れない。もちろんもう一人の医師も優秀で、ウランバートルへ緊急輸送が発生すれば病院の手術室まで彼がアテンドする。
BTOU・・・・・その身体的なリスクをはらんだゴビの大横断は、こうしたメディカルチームに支えられた。しかしなにより、参加者相互のコミュニケーションや、大会本部への迅速な連絡ぶりは賞賛に値する。またメディカルを中心にしたスタッフ全員の参加者へのケアは、いまの可能な限りを尽くしていると胸を張れる。
あとは参加者自身がリスクマネジメント能力を磨くことだろう。ひょっとしてその能力は、ラリーのときばかりに限られない、と思う。
ラリー中に使用した輸液類・・・・・約60本
ラリー中に使用したレントゲンフィルム・・・・・約30枚
きょうの一枚
エタップ5 SSスタート地点、ライダーはゼッケン1ローレンスさんアラビアの・・・じゃなかったモンゴルのローレンス! |