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                                     「キターーー!!!」 
                                    
                                    そう、7月23日午後4時35分。東京に"震度5"の地震が来たのだ。 
                                    その時ボクは、新宿高層ビル群の1つ、初台の「東京オペラシティタワー」というビルにいた。 
                                    
                                    その日は"家族の記念日"というコトもあって、東京を一望する地上230mからの眺めと、美味しい料理を54Fの最上階レストランで楽しんだ後で、オペラシティの夏祭りや、ミニコンサートをベンチに座って楽しんでいた時だったのだ。その場所は地下階になるのだが、230mのビルと空を見上げるコトの出来る屋外。 
                                    座っている足元が突然ダダダダと揺れた。 
                                    地下鉄がこんなに響くのかな?と思っていたら、その5秒ほど後に"ズドン"という地響。"キャー"という悲鳴と共に54Fのビルが"ガシャン!"と音を立てて揺れた。 
                                    
                                    ビルのガラスが割れて落ちてくるかも知れないので、1歳の娘を抱きかかえ、妻の手をとり、建物の中に非難した。最新式の高層ビルというコトもあって幸いにも被害などは無かったが、もし54Fにいた時だったらどんなに揺れたのだろう? 
                                    
                                    一番驚いていたのは、レストラン街のインド料理屋のインド人のオバちゃん。「ジシン、コワイね。ニホンはジシン、コワイね!!」と言いながら、大きな包丁を片手にうろうろとしていた。 
                                    一番コワイのは、オバちゃん、アンタだよ!! 
                                     
                                    ■「タイで発見!? スパ太郎の 
                                    実録・盗難バイク奪還劇!!」 
                                    (7ヶ月に渡る バイク奪還までのドキュメンタリ) 
                                    
                                    =前回までのあらすじ= 
                                    2ヶ月の間に合計3台バイクが盗まれ、自力での捜索活動を開始してから5ヵ月ちょっと。盗まれたバイクがタイ北部のチェンマイのバイク屋で発見された。チェンマイに乗り込むと、そのバイク屋の前には、見慣れたBAJAがあるじゃないか!! 
                                     
                                    第21話『オレのフロントサスだ!!』の巻き 
                                    緊張の朝がやってきた。 
                                    タイに来てから3日目にして、ようやくバイク屋と接触する日だ!! 
                                    2台同じ年式の同じカラーのBAJAがあると言う情報。でも昨日の様子では1台しかない。 
                                     
                                    果たしてあれは、オレのバイクなのか・・・!? 
                                     
                                    相変わらず皆でのんびりと朝食を食べ、昼前になって、ホテルからロケバスのワゴン車に乗り込む。横でカメラマンが機材のチェックを行っている。10分もしないうちに店に着く。昨日と同じく2回ほど店の前を通過して様子を伺う。 
                                    やはりBAJAは1台しか無い。 
                                     
                                    店から直ぐの空き地に停めて、店に向かう。 
                                     
                                    車から降りたのはディレクター、通訳、カメラマン、ボクの4人。隠しカメラとマイクを通したボク達の会話は、無線で車で待機しているタイ警察の3人が傍受している。 
                                    
                                    一歩一歩、BAJAが近づいてきた。少し緊張する。店員の様子を伺い、こちらを見ていないコトを確認し、BAJAの横に立つ。 
                                     
                                    ハンドル回りに付いている大型のハンドガードはボクのモノだ! 
                                    去年のロシアンラリーで転んで傷が付いた後もある。フロントサスペンションも間違いなくボクのモノだ!! 
                                    青いラフ&ロードと、ブリヂストンのステッカーが貼ってある。貼る位置、貼り方も一緒だから、疑う余地は無い。 
                                    ホントにあった! 
                                    日本から遠く"タイ"にあった。日本で盗まれた物が、本当にタイに来ているのだ!!他のステッカーなどは剥がされていたが、ガソリンタンクのキズも懐かしい。 
                                    
                                    でもナゼかしっくりと来ないのだ。なんていうか・・・。他人というか、心が通わないというか・・・。 
                                    「そうだ!車台番号を確認しよう!!」 
                                     
                                    こんなコトさえなけりゃ、書類を見なきゃわからない車台番号はもう暗記済みだ。ハンドルを左に切って、アクセルワイヤー、クラッチワイヤー類を押し除けながら確認する。 
                                    「えーと、MD30-1400787」(※実際に確認した番号です!) 
                                    「・・・えっ? オレのか???」 
                                    なんて事だ!! この時のために覚えた車台番号が、緊張と興奮の為に混乱している。 
                                    バックを開け、車台番号を控えたノートを捜す。 
                                    「あっ!」怪しげな行動に気づいたのか、店のスタッフがこっちを見ているじゃないか・・・。 
                                    「見るな!見るな! 余計に緊張するじゃないか!」 
                                    "視線"というプレッシャーを感じながらも、控えたページを開いて、もう一度確認する。 
                                     
                                    MD30-140まではあっているが、下4桁が違う。何度も何度も確認するが、やっぱり 
                                    違っている。 
                                    「オレのバイクじゃない・・・」「じゃ、オレのはドコに行ったんだ・・・?」 
                                     
                                    スタッフの元へ寄り、「ボクのじゃなかったです・・・」と、小声で報告をする。 
                                    『店長に接触しましょう!』 
                                     
                                    緊張が走る。キケンは無いのか! 
                                    ピストルはでて来ないか!ボクよりも少し背の高い店長に、通訳を通して「もう1台BAJAがあったでしょ!? 
                                    どうしたの!?」と聞くと、 
                                    『そんなバイクは知らない』とシラを切られた。 
                                    日本で盗まれたバイクを捜している事情を説明した。 
                                    そして日本から持ってきたいくつもの写真を見せ、「このハンドガードと、サスペンションは、そこのバイクに付いてるモノと一緒だよ! 
                                    知らないバズは無い」と説明すると、苦虫を潰したような顔になった。それでも『知らない』と言い張るので、「じゃ、警察に言いに行こう!」と、みんなで店を出るそぶりをみせた。 
                                    すると態度が急変し、 
                                    『まったまった! 警察は無しだよ!! ああ、確かにあったけど、売れたんだよ!』 
                                    「売れた!?」 
                                    やっぱり売れちゃったのか・・・!  
                                    「いつ!?」 
                                    『1週間ぐらいまえかな?』 
                                     
                                    えっ! 1週間前!? 
                                    TVスタッフが準備に時間がかからなければ、まだココにあったんじゃないか・・・! 
                                    なんてこった・・・! たった1週間のタッチの差じゃないか・・・。 
                                     
                                    通訳が『デンマーク人が買ったそうで、今、売った証拠も見せるって!』 
                                    奥のデスク周りで書類を出して通訳に見せている。ディレクターもタイ語が話せるようで、 
                                    会話に加わっている。 
                                    ボクはその会話を聞いてもわからないので、やりとりを見ている。 
                                    時々、口を挟むのだが、邪魔なようだ・・・。 
                                     
                                    呆然とたたずむしかないボクだった・・・。 
                                    やっぱり売れちゃったのか・・・!  
                                    タイまで来て、これからどうすりゃいいんだ!? 
                                     
                                    頭の中は後悔と失望でいっぱいだった。 
                                     
                                     
                                    =つづく= 
  
                                    *写真 
                                    タイに持ち込んだ写真の1枚。前年度のロシアンラリーにて。このサスペンションのステッカー、ハンドガードなどが写真と一致して決め手となった。他にも縦・横・斜め方向からの写真を持参。 
  
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