「旅をしています。」
三重・奈良両県を旅しています。これまで何度も来たことのある場所も、改めて旅してみると、見落としというのか、突っ走って締まったのか、真新しい遺跡や社寺が出現します。専門家にとっては当たり前の社寺でも、ガイドブックや地元の案内を見ながらうろついてみると、とても新鮮です。
しかし、市販されているガイドブックのいい加減さには驚きます。ホテルのツインルームは「一部屋の料金です」とわざわざ書きながら、ホテルへ行って聞いてみると1人料金だったりします。もっと酷いのは広告を出さない、掲載料を出さない店は、掲載しないと言う儲け主義です。
雑誌の経営事情は分かりますが、掲載料を払う店ばかり出して、どうするつもりなのでしょう。吉野の山の小さな店で話をしていたら、こんな嘆きが出てきました。
「何度かその雑誌に出たのよ。その時はお金をくれとは言わなかった。この前、そこの雑誌の人が来て「何十万円か出せば掲載する、と言ったんです。うちはそんなお金はないし、そんなことをすれば、値上げしてお客さんからもらうほかないでしょう。だから載せなくて良いです、と言いました。そしたら載りませんでしたね」
こういう商売は観光客を誤らせます。テレビで食べ物の番組に出演したタレントが、こんなことを言いました。
「あんな美味しくないものは、あまり食べたことがないのよ。でも番組に出ているでしょ。不味いのに“美味しい”と言わないといけないのよ」
もういい加減に、P R の部分とまともに作っている番組やページを、一般の人に分かりやすくする時でしょう。過大標示、誤解を招く記述などと、製造会社のことはいかにも悪者のように報道するのですが、記事広告と称するお金をもらって、実は誤解させて読ませる広告だったり、もっともらしい番組を観ていると、結局は宣伝だったりの事例があまりにもはびこりすぎているのが、経験者はよく分かります。
マスコミは堕落しています。窮すれば貧す。貧すれば鈍す−。どっちにも当てはまるのが今のマスコミです。もっとも観光地の関係者もどうかしています。吉野の山は桜が終わった今も、殆ど全部の駐車場が1500円です。30分でも、1日でも同じです。桜を観ながらゆっくりするのなら、1500円の駐車料も分かりますが、10分でも20分でも1500円です。ちょっと写真を撮ろうとか、寺にお参りしようという人にはとんでもない値段です。東京都心よりも馬鹿高なのです。
ものには相場というものがあります。地元の小さな店の人は言いました。
「前は1000円だったのです。山の管理協力費を500円取っていたのですが、払わない人が多いんです。だから観光協会は1500円にして、500円を協力費として納めるようにしたんです。でも1500円取って、500円を納めない人は多いんです」
そういえば、群馬県の草津温泉でも入湯税150円を各旅館は1人あたりきっちりと徴収していますが「かなりの旅館やホテルは街に払っていない」と言う人は多いのです。本当でしょうか?本当なら詐欺です。横領です。町当局もそれを厳しく徴収していないとも聞きました。
役人と業者のなれ合いは、客を騙して入湯税や清掃協力費を業者が猫ばばすることを、暗黙の了解として締まっているのかも知れません。こういうところをマスコミは突きません。マスコミは相手を責める(攻める)ことは知っていますが、自分が責められることに恐怖感を持っているのでしょう。そこで業者や地元行政との呉越同舟の“悪”がはびこるのです。
きれい事を言う前に、観光客からいかにも大義名分状態の名目で金を徴収し、それを懐に入れる業者をキチンと“詐欺罪”“横領罪”で告発すべきです。暴利を貪る観光業者をキチンと取り締まることもせず、入湯税や清掃協力費などを盗み取らせている自治体は許せません。マスコミもこういうことになると全く勇気も正義感もないのが今の日本の実情です。旅はこんな世の中のお粗末も教えてくれます。
写真 一枚目:吉野の大蔵寺。 二枚目:軒を連ねる門前町 (写真は直接、記事とは関係ありません)
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