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何かと不穏な時代に大先輩からの「おい、なんだい!」と、難題山積みの熱きメッセージ、まあSSERの社説のようなものです。

 

「3輪レースとソーラカー」

自動車ラリーのジュニア世界選手権(J W R C )に参戦したワークスチームを指揮していたエンジニアから「定年退職しました」とのメールが来た。W R C の取材かたがた、J W R C もカバーしていたが、その時以来のつきあいなので、もう10年ほどになろうか。

「ご苦労様。これからは楽しく遊んでください」と返信を書いたら、驚いたことにこんな連絡が来た。

「11月7日に富士スピードウエイで開催される“F S W ”のG T 3にゼッケン83番で参戦します。レギュレーションが気に入って小生が設計しました」

富士を走る。クラスはG T 3−。こりゃ、退職したとは言え現役だな。エンジン設計の専門家だから、凄いスポンサーが付いたのかな…。例によって早合点し、どんな車なのか俄然興味を持った。

ン?何だこりゃ…。

メールを読み進めるうちに、こう書かれていた。

16インチ・フロントドライブ、フリーホイール付き(こぐのを休める)、クランク長:45mmまたは6mm、3 W S :曲がるためにリーンする(車体が傾く)と12インチ後輪が回転方向に向く。ブレーキ:カンティレバー方式。

「なお、エンジン兼ドライバーはスズキのエンジン設計新人君たち10人です」。

直感的に4輪レースを連想したのはお粗末だった。何のことはない「3輪車」のレースだった。早速、主催者のホームページを探し当て、既にこの5月には1回目の大会が開催されているのも分かった。

今流行のエコにどれほどの貢献ができるかなど、考える方がどうかしている。大人の遊び、子供も参加できるので、家族ぐるみの3輪車大会と言うことになる。市販車クラスと改造(またはオリジナル設計)のクラスがあり、簡単なレギュレーションはあるが、リアの内側車輪がリーンするとか、動力を伝えるペダル、乗車位置、ハンドルの高さ、形状、タイヤのサイズ、幅…、等々、工夫の余地は沢山あり、第一線を退いたエンジニアの遊びとしてはうってつけかも知れないと思った。

乗り物の価値観も大きく変化し、速く走ってみせるF 1グランプリはショーとして一つの方向だろうが、観るだけ。自動車やバイクのサーキット・レースは莫大な経費が掛かり、普通では参加など到底かなわない。

「いずれは本コースでの開催も…」と主催者のH P にあったが、馬鹿馬鹿しくも微笑ましいものだと思った。

そう言えば10月末に4日間かけて、オーストラリア最北のダーウィンから南のアデレードまで走るソーラカー・レースで、篠塚建次郎さんの運転する東海大チームが優勝した。シャープのソーラパネルで発電しての走行。押され気味だった日本のソーラーパワーの先進性、技術力を世界に示したように思う。

パリダカでは常にトップを狙っていた篠塚さんはラリー・モンゴリアで“最も遅い”カミオンバレーのドライブを担当。そこで“耐えること”のおさらいがたっぷりと出来、時速100kmそこそこで走るソーラカーのコクピットで我慢の運転が上手に出来たのかな、などと思ったりした。

競技用3輪車を大まじめに作っているエンジニアの遊び心と、建次郎さんのソーラカーとは異なるが、エコを前面に出した遊びやレースが、どうやら世の中に認知されつつあるように思った。

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