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何かと不穏な時代に大先輩からの「おい、なんだい!」と、難題山積みの熱きメッセージ、まあSSERの社説のようなものです。

「冬の富士山」

片山右京さんのパーティーが富士山で遭難し、2人が亡くなった事故は痛ましい。「気がついたらテントがなかった」と右京さんの言葉にもあったが、独立峰の富士山の突風は信じられないほどの威力がある。

学生時代なのでもう随分昔だが、11・12月、4・5月にはたびたび富士山へ登った。雪上訓練のためだった。6合目辺りと頂上にテントを張り、毎日頂上を往復したり、頂上に張ったテントに泊まり込んで大火口壁を登り、小火口で滑落止めの練習を繰り返した。

ゴーっと言う音がすると、間違いなく突風が来る。アイゼンを着けた両足を開き、姿勢を低くし、ピッケルに上体の重みをかけて三角形を作り風を待つ。頂上幕営用の食料ボックスを背負っていた仲間が、突風に巻き上げられて宙を舞い、辛うじて結んでいたザイル仲間に確保されたこともある。

酷い話だが夜中に小便でテントの外へ出た人が、無防備にも靴下のまま凍ったテント場で滑り、アイスバーン状になった斜面を滑落して死亡した例もある。雪を融かして水を作るが、狭い斜面にテントを張るときには、左か右かに必ず炊事用の雪ブロックを置き、反対側は小用などに当てる決まりもあった。

突風や氷の急斜面は富士山ばかりではない。テントを張って中にはいると、テント場の危うさを忘れがちだ。荒れた山だったらなおさらのこと、信じられないくらいの安堵感がある。寒さ、強風の中でのテント張りは辛く、厳しいが、ここでちょっとでも手を抜くと酷い仕打ちを受ける。

テントの裾には雪や氷のブロックを並べなければならない。人が入っていて、荷物もあるから大丈夫と思ってはいけない。テントの裾に入り込んだ風は、猛烈な圧力となってテントそのものを浮かす。右京さんの仲間2人が、手を抜いていたというのではないが、荒れる冬山は想像を絶するシーンもあり得る。決断と行動力が生死を分ける。

バイク、車の運転、魚釣り、スキー…。日常の遊びにも様々な、思いもかけない危険がある。決断の遅れは命取りにつながるが、どうも日本の政治家はその危機意識が低いようだ。

各国首脳が1人で眦を決して乗り込んだC O P 15にも、出しゃばりカーチャンとお手々つないで出向いた首相もいた。決断を先延ばしし、吶々と言い訳をして安住していられるのは、世の中、今をときめく政治家くらいではないのかな?

写真
一枚目は伊豆・達磨山から
二枚目は西伊豆・雲見から見る冬富士

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