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何かと不穏な時代に大先輩からの「おい、なんだい!」と、難題山積みの熱きメッセージ、まあSSERの社説のようなものです。

 

 

地中海のマルタ島に来てます。イタリアのシチリア島の南にある小さな島で、中世の騎士団が作った国ですが、侵略、略奪の繰り返しや植民地支配を受け続けるなど、波乱の島でもあります。有史以前の神殿なども発掘されていますが、首都ヴァレッタは街そのものが中世の要塞で世界遺産に登録されています。

この島を訪れたのは特別の理由はありません。フェニキア人が移り住んだとか、カルタゴとギリシャ、ローマとの戦いを何となく知るうちに、いつか海賊も登場し、十字軍の騎士団の別働隊みたいなグループがマルタを根城にしたのです。

オスマントルコとの戦いや海賊対策で、小さな島のさらに小さな半島は、すっかり要塞となったのです。オスマントルコの侵攻を撃退した後にはフランス、イギリスの支配を受け、独立したのは1964年、共和国になったのは1974年のことです。

マルタに行ってみようと思ったのは、もうずっと前ですが、ほかの国を巡ることがより興味深く、遅れに遅れて今年になったのです。来ることに決めて、騎士団の作った国とは全く異なる日本との関係に行き当たりました。日本の駆逐艦「榊」がドイツ潜水艦の攻撃を受けて艦長以下59人が戦死したのです。

第一次世界大戦で日本は英国を主軸とする連合国と組みました。日本海海戦でロシア艦隊を破り、世界に冠たる勇名を轟かせた「大日本帝国海軍」は、地中海へ特務艦隊を送り込みました。英国輸送船を護衛していた第二特務艦隊所属の駆逐艦「榊」は無念の撃沈となったのです。
 艦長以下の乗組員の墓地がマルタ島ラルカラの町外れにあるので、なんとしても墓参しようとレンタカーを走らせて探し回りました。何しろマルタの田舎です。両側に家が連なったり、石灰岩の石垣の塀が続く狭い道です。迷った末に三叉路に行き当たり、日陰で涼んでいた老人に聞きました。

「日本海軍兵の墓地を知りませんか?」
「そこだよ」
「そこって…」
「そこだよ。その門を入ってまっすぐ行けば日本人墓地があるよ」

なんだか引きつけられるように、日本人墓地のある英海軍墓地の真正面にたどり着いていたのです。 椰子の木が並木のように植えられた正面の通路の両側は錨のマークが付いた英国海軍兵の墓地が続きます。100メートルほどで突き当たりですがそこに立派な石塔が建っていました。

「大日本帝国海軍第二特務艦隊戦死者の墓」と墓標にはありました。

横には経緯とともに、59人全員の名前が書かれていました。この墓地には昭和天皇が皇太子時代に欧州歴訪の途上に訪れて献花されています。

「天気晴朗なれど波高し…の名電文で知られる日本海海戦の指揮官、秋山好古氏も訪れているそうです。古きよき時代は過去のものになりましたが、国のために命を捧げた人々を偲び、敬意を表する大切さは、平和呆けした日本人も思い起こすべきでしょう。過去があるから今があるのです。過去を消し去ることはできませんが、何でも日本の過去は「悪い」と決めつける風潮に、亡国思想の思いがあります。

過去がなければ、過去を非難する人たちも「いない」のです。過去の日本が悪いことをしたと反省ばかりするのが、インテリの象徴のように錯覚している人も多いのですが、もし明治以降の日本が「友愛」などとほざき続けていたら、間違いなく欧米の植民地になっていたでしょう。

激動の時代が過ぎ、戦争を知らずに60年以上も経過すると、日本国そのものの存在が、永久不変のように錯覚するのです。反省だ、友愛だと言うのは易しいことです。たわいもないことですが、侵略・略奪が日常だった欧州の歴史を知るにつけ、なんと日本人はお人好しなのか、それとも馬鹿なのかと思います。特に友愛などとほざき続ける首相経験者は、まず有り余る金で保育所でも作り、社会貢献でもして見せたらどうでしょう。別荘に人を集めて大金を遣うことはしても、自分の金を社会に役立てることもできない強欲なのに、国の金ならいくらでもばらまくのです。

焼けるようなマルタの太陽に照らされた午後、「大日本帝国海軍第二特務艦隊戦死者之墓」の前で、今のよろめき、世界にコケにされている日本の政治を思うと、地中海に散った先人になんだか申し訳ないような気になりました。

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