「リアル・インディ・ジョーンズ」
ロン・ワイアットというアマチュア考古学者をご存知だろうか。
真の意味でインディ・ジョーンズのモデルになった男である。いや、インディをそのまま踏襲したと言った方が正確かもしれない。彼の業績は考古学学会からは異端視され無視され、時には詐欺師扱いまで受ける。しかし、その業績がもし本当であれば驚きに値する。
彼は、モーゼの十戒が刻まれた石版を収めた契約の櫃《アーク》を、1982年にイスラエルで発見したというのである!事実ならば、20世紀においてハワード・カーターによるツタンカーメン王墓の発掘をもしのぐ大発見である。しかしこの大発見は、写真や物的証拠がありながら、当時いかなるメディアからも報道されることはなかった。
通常はこの時点で、眉唾物扱いされるのがオチである・・・。
ただし、その背景には次のような裏事情があったという。それはこの大発見が、これまでの学説やパラダイムを覆すだけでなく、国際情勢や宗教界に大変動をもたらすほどセンセーショナルなものであったため、それを憂慮したイスラエル政府によって発掘許可が取り消されたというのである。イスラエルは世紀の大発見を機密扱いとして、完全に封印したという。
イスラエルだけに”さもありなん”という感じも否めない・・・。
映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』は、1981年に公開されているので、インディ・ジョーンズが彼をモデルにしたということはあり得ない。この映画は、そもそも1930年代の映画『キング・ソロモンの秘宝』の焼き直しであり、主人公のインディアナ・ジョーンズ博士は、後者の主人公アラン・クウォーターメインのオマージュである。
ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグは、そこに『007』的な要素と昔の連続活劇的要素を取り入れて第1作を制作したが、それはロン・ワイアットの発掘と同時進行で進められたことになる。映画公開と聖櫃発見がほぼ同時に行われたという奇妙な符号は、いったい何を意味するのであろうか。
ハリウッド映画には巨額な資本が投入されおり、様々な投資家の思惑に内容が左右されるという。純粋な娯楽の中にさらっと政治的なプロパガンダを反映させたり、隠蔽された真実をにわかに反映させているという話を聞いたことがある。それは政治戦略でもあるが、大衆に無意識レベルで真実を公開することによって、いざというときのリスクヘッジを行っているという話である。
ロン・ワイアットが聖櫃発掘において、ある政府機関の支援を受けていたという話もあり、もし事実であれば『レイダース/失われた聖櫃《アーク》』は、聖櫃がロンの手によって発掘され世界に公開された際の緩衝材として製作意図された可能性も否定できない。
ロン・ワイアットの業績はこれだけではない。トルコのアララト山近郊におけるノアの箱舟発掘にはじまり、アカバ湾の海底ではモーゼの出エジプトの現場を、サウジアラビア北西部では、定説と異なる本当のシナイ山を金の仔牛の祭壇とともに発見している。他にもゴルゴダの十字架跡や、ソドムとゴモラを含む5つの滅亡した都市を、多数の燃え落ちた丸い硫黄の玉と共に発見したという・・・。
ロン・ワイアットの業績は、ジョナサン・グレイ著の『契約の櫃』(徳間書店)に詳しい。 彼の立ち位置は、世のパラダイムを覆すような発明をしながら、その業績をエジソンに阻害されたニコラ・テスラに近いとも言える。アマチュア考古学者の業績を絶対に認めようとしないのは学会の常である。そこには嫉妬や羨望もあるのであろう。
しかし、ロン・ワイアットが世に出なかったのは、彼が社会的な成功や名誉に固執しなかったからであろう。彼の記録を読むと、彼が聖書の記述が歴史的事実であったことを証明したいという純粋な情熱から発掘を続けていたことが読み取れる。だからこそ、これだけの発見が可能だったのかも知れない。事実であれば、という但し書きがつくが・・・。
インディ・ジョーンズのモデルはこのロン・ワイアットの他に、考古学者ヴェンディル・ジョーンズやジョバンニ・ベルツォーニなど諸説あるが、最近やたらと露出の多いザヒ・ハワースでないことだけでは確かである(笑)。
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