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「ピラミッド、その圧倒的存在-1」

そこに黄金の山があった。それは圧倒的な密度で聳え立ち、黄金色に輝いていた。太古の強力な意思と突出した叡智の結晶。具現化した美しい神聖幾何学がそこにあった。

ついに来た。ついにやって来たのだ。2002年3月、僕はエジプトの大地に立っていた・・・。

エジプト、憧憬の大地。夢にまで見た聖地。夢にまで見た遺跡。それが今、目の前にある。

ギザの3大ピラミッド。それは太古の人類が残した壮大な文明のモニュメントであり、時代を問わず人々の想像力を刺激するイマジネーションのパズルである。それは大地にずっしりと根を降ろし、母なる地球に繋がり、天高く宇宙に繋がっていた。

この日を僕はどんなに待ちわびたことか。僕は子供の頃からピラミッドが大好きだった。ピラミッドだけではない。モアイやマチュピチュ、ストーンヘンジなど古代遺跡が大好きだった。

これまでの旅でも、僕は多くの遺跡や世界遺産を見てきた。インドのタージ・マハルやアジャンタ、エローラの石窟寺院、カンボジアのアンコール・ワット、トルコのカッパドキアやトプカプ宮殿、ギリシアのパルテノン神殿やクレタ島のラビリンス、ロシアの聖ワシリー寺院など、いずれも人類史に残る偉業の数々である。

しかし、そのどれにも負けない遺跡を1つだけ挙げるとすれば、それはエジプトのピラミッドをおいて他にない。それは圧倒的で絶対的な存在なのである。これを見なければ、“遺跡を見たとは言えない”であろう。

僕はエジプトの首都カイロに到着するやいなや、荷物をタフリール広場に面した安宿に降ろし、即座にピラミッドに向かった。

ギザの3大ピラミッドは、カイロ中心部から約13キロ西方に位置する。その美しく宇宙的な調和を醸し出す四角錐は、突然バスの車窓越しに現れた。道路はまるで参道のように、遠近法をともなって四角錐まで真っ直ぐ伸びていた。バスが近づくとともにそれはどんどん巨大化していく。

「おおおお…」

僕は言葉も出なかった。それは地表よりもかなり高い位置に座している。ピラミッドそのものが平地の上ではなく、台地の上に建てられているのである。したがって地表から見上げるのその雄姿は、想像以上に大きく見える。台地を利用したのは視覚的効果を狙ったのであろう。建造者の戦略的な意図を感じることができた。

ひょっとしたら、世界が壊滅的なカタストロフィーによって海に没したとしても、ピラミッドだけは海に没せず半永久的にこれを残存させるために、このような台地に基盤を求めたのかも知れない。そんな考えがふと浮かんだ。

バス亭を降りると、前方に空高く2基の巨大な人類の叡智が聳え立っていた。第1ピラミッドと第2ピラミッドである。それは僕の視界の範疇を超越し、世界を魚眼レンズのように捉えなければすべてを認識できないほど巨大なスケールで存在していた。

圧倒的である。圧倒的な存在感。第2ピラミッドの上部が太陽をまぶしく反射させ、光り輝いていた。それはまるで非現実的な存在でありながら、現としてこの3次元に絶対的に存在していた。台地を登りながら目の前に迫る2基のピラミッドの生命場のようなものを強く感じた。

空気感が違う。空気が細かく振動しているようだ。

それは強烈な個性を放つ誰かが、部屋に入って来たとたんに場の空気が変わるような波動のようなものである。まるで生きて脈打っているようだ。いったい何だこれは。当然ピラミッドのことはよく知っていた。映像でも写真でも何度も見た。しかし、実物は既存のイメージを遥かに超えていた・・・。

続く・・・。

 

 


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