「旅の醍醐味」
”旅は人生の縮図である”という言葉があるかどうかは知らないが、多くの人が同様の意味のことを言っていると思う。
僕もそう思う。なぜならどのような旅のスタイルを採るのか、旅の行程で起こるハプニングやトラブルにどう対処したのか、そういう一つ一つの旅での行為が、日常生活での行動パターンの縮図であり個人の生き方を象徴しているからである。
例えばある国を訪問したとする。駆け足で国中を観て周ろうとするのか、あるいは気に入った一つの街に長くとどまろうとするのか。積極的に現地の人と交わろうとするのか、極力接触を避けるのか。現地の食べ物を積極的に食べるのか、普段と同様の食事で済まそうとするのか。
そういった行動パターンの一つ一つを後で検証してみることによって、自分自身を客観的に再発見することができるのである。それは一人旅であればなおいい。誰にも頼れないがゆえに、顕著に自分の本質と対峙せざるを得ない。
旅先でハプニングやトラブルに遭遇した場合、冷静に状況を把握し的確に対処できるか、あるいはパニックに陥って何もできないか。言葉が通じなくて困った場合、身振り手振りを使ってでもなんとかコミュニケーションと図ろうとするのか、あるいはさっさと諦めてしまうのか・・・。
旅先で自分がどういう行動を取ったのか。それが自分の人生の傾向を端的に象徴しているのである。
一人旅が”自分探し”といわれるものこのような理由からだろう。人は他人のことはよくわかるが、自分のことは意外と知らないものである。僕自身も旅先での自分の行動やトラブル発生時における対処の仕方、旅のスタイルから自分でも気がついていない自分の本当の姿をいくつか見つけることができた。
僕の場合、初めて訪れる国は極力すべての観光スポットを、駆け足で観て周ることが多かった。欲張りなのである。二度目以降に同じ国を訪れる場合には、自分が気に入った街に長くとどまることが多い。食事はできるだけ現地の料理を食べ、現地の文化や芸術に目を凝らし、現地の遺跡に驚嘆した。とにかく、その場所でのみ体験できることに価値を見出していた。
積極的に値切り交渉を楽しみ、最低限の現地の言葉をしゃべるように心がけた。宿泊先に関しては、バックパッカーを始めた頃は極力安い値段の宿に泊まることを是としたが、今は少しくらい高くても最低限の快適さを求めるようになっていた。ダニまみれの毛布に包まって、留置場のような部屋で一晩過ごすのはもういい(笑)。
インドのバラナシから、ネパールのポカラに向かうバスの中で有り金全部すられたときも落ち込むよりも先に、これからどう行動すべきか次のことを考えていた。・・・と、こんな風に、自分の傾向がよくわかるのである。大胆な選択をするものの、実際行動に移す場合にはかなり慎重になることもわかった。
このような自分探しができることも旅の魅力だが、なんといっても旅の醍醐味は日常生活では決して出逢うことがないような人々に遭遇することである。言葉も文化も人種も異なる人々と友情を育むことができることである。生涯の友になる場合もある。インドで出遭って友人になり、メキシコまで会いに行ったこともある。
世界中に言葉や人種の異なる友達がいたら、とっても素敵なことだと思う。
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