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「リブート」

”リブート”という言葉がある。パソコン用語で操作中に不具合が発生した場合、最後の手段としてスイッチを切って立ち上げ直す方法のことである。もともとはカウボーイの言葉である。ブーツの中に入り込んだ麦藁が気になって仕方のないとき、思い切って馬から降り、面倒だが一度靴ヒモをほどいて逆さまにしてブーツから藁を掻き出す。これがリブートである。

人生にもこれが必要だ!と経営コンサルタントの大前研一氏が力説していた・・・。

「要はもったいない、このまま行ければいいなどと過去に固執せず、”オールクリア”してゼロベースからやり直す。リブートする覚悟があるかどうか。それが今後の人生を左右する重要な決断となる・・・」

さらにこうも述べている。

「たとえば今35歳だとする。人生80年だと想定してあと倍以上は生きる勘定だ。生まれてここまできたのと同じくらい長い人生がこの先あるわけだ。生まれ直せばいい。おおまかな青写真として最後の20年について、きちんとした人生を過ごすためにこれから10年は徹底的に訓練するんだという決意を固める・・・」

別に僕はこの言葉を鵜呑みにしたわけではない。鵜呑みにしたからといって、簡単に実行できることでもない。それにはかなりの痛みと苦しみがともなうし、断行する決断力と勇気も必要になる。

でもリブートしなかったら、僕は八方塞りの人生から抜け出せなかったように思う。今、思えば・・・である。リブートを決意した当初は嵐のような毎日で、身を真っ二つに引き裂かれるような思いだった。涙が枯れるまで泣いたし、とても自分を客観的に振り返る余裕などなかった。

人生を一からやり直すべきかどうか相談したこともある。イワサキモータースの岩崎くんにはこう言われた。
「リセット癖がつくで、やめやぁ・・・」
山田さんにもこう言われた。
「無謀すぎるなァ・・・」

その通りである。30代も半ばを越えたいい大人が、これまで築き上げてきたすべてを投げ捨てて、仕事も何もかもゼロからやり直すというのである。リスキーなんてもんじゃない。まさに”アホ”としか言いようがない。自分でもそれはよくわかっていた。

それでもその無謀な挑戦に賭けてみようと思った。その方が未来があるとか、希望があるとかそんなことじゃない。ただ単に、その方が”楽しそう”だったからである。身に染みついてしまった偏見や概念などの思い込み、思考パターン、発想法、悪癖などを一端すべて洗い流し、生活スタイルや人間関係も含めてゼロベースからやり直す。これこそ、人生の大冒険である。

今僕は、東京で新しい仕事のスキルや見識を体得するために日夜格闘している。人間関係もこれから広げていきたいと思っているし、やりたいこともたくさんあるが、まだまだ友人も少なく孤独の日々が続いているもの事実である。この選択が正しかったかどうかはすぐには結論はでない。しかし、はっきりと宣言できることが一つだけある。

それは、”毎日が楽しい!”ってことだ。


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