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【2008TBI SS13 前編】

自身3度目となるツール・ド・ブルーアイランドも6日目を迎え、仕事をしてくれないリアサスに悩まされながらも何とかここまで大きなトラブル無く来れた僕は、まわりの有力ライバルの軽微なペナルティなどのお陰で、前日まで総合9位のポジションにいた。

バッテリーの容量が足らずにハイロー同時点灯させるとSSの途中で暗くなってしまうライトを、チームメイトのかんちゃんから借りたHIDに換装してナイトランの悩みは一応解決したものの、ショックアブソーバーのリバウンド調整ネジが壊れて戻りが極端に遅くなってしまい、SSでは普段の8割程度の速度に抑えないと沈みっぱなしのサスが暴れてどこに吹っ飛ばされるか分かったものではない状態だった。

この日も朝イチのSSではタイヤの空気圧設定を間違えて十分に落としきれてない事を走り出してすぐに気が付き、ガレた下りの林道でギャップ毎に接地感を失う前輪をなだめながら、アタックとは程遠い内容で自らテンションを下げる結果となってしまったが、それでもメゲずに午後はリエゾンを頑張って夕暮れ時のSSに早く辿り着くようにし、日が残っているうちに前倒しで開設されることを祈りつつも、少しでも良い条件で走れるように最善の努力だけはし続けた。

SS13のスタート地点には、おかげで先頭から4番手の順番で到着した。

すぐ前には、無灯火のペナルティが無ければ僕より順位が上だったDR250RのK頭さん、その前には上位争いをしているI町さんとE連さんの優勝経験者たち-いわゆる「テダレ組」な面々が、スタートまでの時間を誰よりも長く待っている。そしてすぐ後ろには直前で順番を譲ってくれたHP2のT代さん、さらにTDR250というオフロード走行にはどう考えても向いていると思われないマシンで脅威の成績をここまで叩き出してきた、ISDEシルバーメダリストのS葉さんが背後に控えている。

彼はここまで僕と十数秒差の総合8位、四万十川の沈下橋を渡るまでリエゾンでT代さんの前を走っていたが、橋の中ほどでカメラを構えている人々にサービスでヘタクソなウイリーをかました際のエンジン音が後ろからアオっているように聞こえたのか、橋を渡り終えた時点で道を譲ってくれた際に鋭い眼光で睨まれて少々怖い思いをしたが、遠慮なく先を行かせてもらうことに。

後から続々と到着するエントラントを段々と遠くに眺めながら、どれくらいの時間を”SS待ち”で費やしただろうか・・・2時間くらいは周りの人達と雑談したり、ウエストバッグを枕代わりにして地べたに寝っころがったりしているうちに、木々に覆われた小路は徐々にその照度を落とし、木漏れ日がやがて影と同化して夕闇が迫ってきた。

朝のブリーフィングで山田さんから伝えられた、18:30のSSスタートまで残り30分ばかりとなった頃、我々エントラントが到着する前から詰めていたオフィシャルのK主さんから、満を持したとばかりにアナウンスが発せられた。

「あと10分でSSスタートとなります。」

まだ十分明るさが残るうちにSSを走ることができる、先着していた一同から歓声が上がった。

各自せわしく身支度を整え、列の先頭に立つG650Xのエンジンに再び火が入る頃、自分は頭の中でぐるぐると錯綜しているネガティヴなイメージと戦っていた。

「ココはSS13、自分のゼッケンは13番、順位が9位・・・不吉だ Orz」

気を落ち着かせようと思ってコマ図に目をやるが、スタート直後に崖のコーションマークが2つ並んでいるのを見て、余計な思い出まで喚起してしまった。

今から2年前、同じ黒尊林道を使った18thTBIのSSで僕は先にスタートしたR1100GSのマイケルと共に、こちらに向かってライトがつきっ放しになっている崖落ちした車両のライダーを2人で手分けして闇の中を探し回っているうちに、それまで総合4位だった順位が11位まで下がってしまった苦い記憶が鮮明に脳裏に浮かび上がる。

SSをいいリズムで駆け抜けるイメージがまったく出来ないまま、僕はXR400のクラッチを仕方なくミートさせた。

【後半に続く】


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